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紀伊半島、聖地熊野を感じるお盆の旅。海辺の灯篭焼きと追善花火

旅のスポット情報
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世界の旅の話からちょっと離れて

この夏、撮影しに訪れた熊野
その伝統的なお盆の行事の魅力をお伝えしています

今回はそのラスト
灯篭焼き追善花火をご紹介します

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灯篭焼き

この日訪れたのは熊野市の海岸沿いにある有馬町

以前ご紹介したイザナミを葬った場所、花の窟神社がある地区です

灯篭焼きが行われる場所へ行ってみると、太平洋に面した広い海岸の中ほどに、海に向かって白い祭壇が設けられていました

初盆を迎える方々の祭壇が、白い紙と木で作られています

この中の蝋燭に火が灯され、灯篭となります

灯篭焼きの行われる海岸
灯籠となる祭壇が並んでいる

ゆかりのある方々が浜辺に集い、亡くなった方の祭壇に手を合わせて、弔いの祈りを捧げます

ゆっくりと、静かに、亡くなった方に想いをはせているようでした

祈る人々

お坊さんも、ひとつひとつの祭壇に焼香し、祈りを捧げます

お坊さんが焼香して祈ります

あたりは次第に暗くなり、熊野の山並みが霞んでいくとともに、ロウソクの光が祭壇の紙を通してボーッと浮かび上がります

浜辺には、時折ゆるやかな風がそよいでいますが、ほとんど風はなく、穏やかな夕暮れ時が流れていきます

夕暮れに灯籠が浮かび上がりだす
暗くなってきた海と灯籠
灯籠の光が力を増すように明るくなる

日の光が消え、空に星が瞬くころ、集まった皆さんがお祈りを終えました

突然、祭壇の灯篭上を横断して渡された綱から、一斉に仕掛け花火が流れ落ちました

見ての如く、銀色の滝が流れ落ちるようで、その名も「銀滝」と呼ばれています

視界の向こうは漆黒の太平洋
左右には何もない広く長い海岸が広がり
余計なあかりはありません

だからこそ、灯籠の灯りや仕掛け花火の光が、闇の中で映えるのです

銀滝

銀滝を浴びた灯篭に火が燃え移り、紙と木でできた祭壇があっという間に炎に包まれました

炎が激しく燃え盛り、その光に照らされた白い煙が宙に舞い上がっていきます
そこにいた魂たちも、舞い踊りながら夜空に還っていくようでした

灯籠が燃え始める

追善花火

こちらの追善花火が始まる前に、隣の地区の追善花火が打ち上げられました

10発かそこらの短い花火だったような気がしますが、ちょうど良い距離で、一瞬の美しい光の花と流れ落ちる光たちを見ることができました

隣の地区の花火
隣の花火

こちらの有馬地区では、灯篭焼きの途中、銀滝が終わったタイミングで、同じ浜辺の数十メートル先から、追善花火が打ち上げられました

数十発くらい、時間的には10分程度だったでしょうか

十分に大きな花火が至近距離で打ち上げられたため、ひとつひとつが大迫力で
振動が全身に響き、視界が光の輪でいっぱいになりました

天に還る魂を感謝とともに見送り
その過去と未来を祝福する
そんな想いが込められているように感じられました

いきなり始まったのでレンズを取り替える暇がなく、画面をはみ出る大花火になってしまいました
印象的には、このくらいの迫力で目の前に迫っていました

「花火大会」という、花火だけが主役のエンターテインメントではなく、お盆の行事の一部分として、灯篭焼きと一体となった意味を持つものだということが自然と感じられる、程よい規模の花火でした

最近は、何千発、何万発と花火が打ち上げられる大規模な花火大会に慣れてしまっていました
それはそれで感動するのですが
今回見た追善花火を知った後では、ほかの大花火大会は過剰な刺激だったように感じます

もっと大きく、もっとたくさん、もっと豪華に。。。と欲望を膨らませていくうちに
その陶酔感に心を奪われ、繊細な感受性が麻痺していたかもしれません

花火1発に込められた気持ちを受け取るには、それなりの余白と余韻が必要でした

大勢人の集まる大規模な花火大会では得られない味わいを、地区ごとに行われる少人数の小規模な花火が教えてくれました

大規模ショッピングセンターや大規模スーパーと地元の小さな商店の違いみたいですね

灯籠の残骸が燃える

追善花火を終えるころ、灯篭は姿を失くして、残った材が最後の炎を燃え上がらせていました

真っ暗な海の向こうには満天の星空が広がり、それらを背景にして、白い煙が吸い込まれるように空へと消えていきます

行事としては終了しているのかもしれませんが
燃え上がる灯篭の残骸
それを囲んで、ただその炎を見つめている人たち
散らばった材を黙々とかき集めている人たち
全てがなんとも言えない調和を醸し出していました

人々の様子も、なんとなくすっきり晴々としているように見えました

少し離れたところから見ていると、煙と共に死者の霊が空に舞い上がっていくようにも見えて
この時が一番、精霊の存在を感じた瞬間かもしれません

星空に白い煙が舞い上がっていく
見守る人々と炎と煙と夜の海と空が完璧な調和を生み出していた

おわりに

本物はあえて目立たない

余計なものがなく
静かな流れの中に
一瞬かすかに燃え上がるだけ

そんなシンプルな人の営みの中に織り込まれた
死者の魂と向き合うひととき

目に見えない、本当に大切なものを感じるためにこそ存在する素朴な儀式

それを可能にする豊かな自然と
不思議と力みのない人々のたたずまい

そんなことを感じた、お盆の熊野の旅でした

最後に、熊野を案内してくれた友人推薦の図書をご紹介しておきます
1点目のRDGは全6巻の途中まで読んでいて
どちらかというと女子向けのお話かもしれませんが、山伏修行をしたことのある身としてつながりも感じますし、何より、ドキドキする展開に引き込まれてしまいます
2点目の「清姫は語る」はシリーズ物の中の一冊ですが、非常に興味を惹かれる内容で、熊野、そして日本の歴史を知るためにも、これからぜひ読みたいと思う本です