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スリランカの古都、世界遺産都市キャンディの旅〜ツアーからの解放

旅のスポット情報
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ここから本当の旅が始まった

50歳からスタートした初めての海外一人旅が世界一周バックパックの旅だった。
最初に訪れたのはスリランカ。
自由気ままな一人旅がスタートする、はずだった。
しかし、最初に泊まった宿でうまいこと言いくるめられ、お抱え運転手兼ガイドによる1週間ほどのプライベートツアーからのスタートになってしまった。
こんなはずじゃなかった、という思いでたどり着いたツアー最後の場所がキャンディだった。

キャンディ周辺では、ハーブガーデン、紅茶工場、ピンナワラの象の孤児院などの観光スポットを巡り、キャンディ市内では、伝統舞踊のキャンディアンダンスショーを見るという、いかにもツアーコースといった感じでツアーのフィナーレを迎えた。

最終日にはアンケートを書いて提出するのだが、ガイドさんは、自分に対して最高の評価を与えるようにと、かなり露骨なプレッシャーをかけてくる。
さすがに最高評価というのはサービスしすぎだと思い、それでも妥協して一ランク下げた評価をつけた。
すると、日本では考えにくいことだが、ガイドさんは、その場でアンケート結果を開いて見てしまい、これまた露骨に不満たっぷりの様子。
それでも最後までツアーの延長を強く求めてきたが、これはキッパリとお断りし、ようやくガイドさんとの二人旅から解放された。

キャンディ市内の宿を自分で予約し、ガイドさんと別れてチェックインしたときの解放感は忘れられない。
自分一人の自由気ままな旅。思い描いていたドキドキハラハラの旅が始まった。
腹の底から湧いてくるものは、生命力、勇気、希望、喜び、そういった諸々の感情が渾然一体となった熱い塊みたいなものだった。
何がおかしいわけでもないけれど、自然と腹の底から笑いがこみ上げてきた。

キャンディアンダンスショー

旅の醍醐味〜経験すること全てが新鮮で、嬉しい、楽しい

ガイドがいてくれると、楽で、便利で、安心安全だった。
けれども、その代わりに一人旅独特の醍醐味は味わえなかった。
それが一気に味わい放題になった。

まずは宿。片言の英語でなんとかチェックインすることだけでも全力投球だ。
そのおかげで、チェックインできただけで感じられる大きな達成感。
少しずつだが、やればできるという自信がついてくる体験の始まりだった。

この時はまだ、ドミトリー式のゲストハウスの良さを知らず、惰性で個室の部屋を取っていた。
一人になりたかったという気持ちもあったと思う。
静かな一人の夜を過ごす、はずだったが、夜中に隣室から大声が聞こえてきた。
隣は欧米系の若者数人が泊まっているらしく、真夜中に酔っ払って帰ってきて、大声で喋っている。
しばらく我慢していたが、おさまる気配がない。
解放感から気が大きくなっていたのもあって、直接注意をしに行くことにした。
廊下に出て隣室のブザーを鳴らし、上半身裸で出てきた若い男に、適当な片言英語で、「眠れないから静かにしてくれ」というようなことを訴えた。
相手は悪びれる様子もなかったが、「分かったよ」みたいな返事をして引っ込んでいった。
部屋に戻ると、それ以降、うるさい話し声はしなくなった。
彼らは案外素直で、静かにしようとしてくれているらしい。
話す声はひそひそ声だ。
だが、ひそひそ声ですらはっきり聞こえてくる。
声が聞こえる浴室の方へ行ってよく見てみると、なんと浴室の壁の上の方が天井まで届いておらず、ちょうどトイレの個室の上の方があいているのと同じように、隣と筒抜けになっているではないか。
これではうるさいはずだ。
僕は音に敏感な方だが、声が響いてくる原因がわかって、隣室の若者たちへの苛立ちもなくなると、ほぼ気にならなくなった。

翌朝、ホテルのロビーで隣室の若者たちと顔を合わせ、挨拶を交わすと、向こうから、「昨日はごめんね。あとで見たら、バスルームの壁の上の方が空いてたよ。」と言ってきた。
僕も、「そうそう、そうなんだよ。あれじゃうるさいはずだよね。」と言って、笑い合った。
なんだか嬉しくなって、心から笑った。
何の変哲もないことでも、初めての異国の地で、初めての経験ばかりという状況だと、やたら心を揺さぶる。
もう忘れてしまっているけど、赤ちゃん時代とか幼い子供だった頃の経験もこんな感じだったのだろうか。

仏歯寺の中

初めての博物館

キャンディでは、街歩きを楽しみ、有名な仏歯寺やその周辺にある博物館を見学した。
市場を見たり、湖の湖畔を歩いたり、ランチを食べたり、確かルンギーと呼ばれる腰巻を買ったり。。。
特段劇的なことがあったわけではないけれど、一つ一つが新鮮だった。
未知の世界を歩いていると、五感は自然と研ぎ澄まされてゆき、それがまた体験のインパクトを強めていく。

仏歯寺の裏にあった国際仏教博物館では、危うくカメラを没収されそうになった。
撮影禁止なのは分かっていたが、人もおらず、ちょっとくらい撮影してもバレないだろうと思って写真を数枚撮っていたら、見回りの職員に見つかってしまったのだ。

持っていたカメラを取り上げられ、「ついてきなさい」と厳しい口調で言われて、入り口のところまで連れて行かれ、別の男性職員に引き継がれた。
意外な厳格さに、この先どうなるんだろうと不安な気持ちでいると、その男性職員は、親しげな様子で、「しょうがないなー。今回は許すから、撮った写真は消してね。」と言ってくれた。
僕は、ほっとして、一気に緊張が解け、「ありがとう。」と言ってカメラを受け取り、すぐに撮った写真データを消去した。
思い出してみると、その男性職員は、僕が入館するときに手続きをした人だった。
僕が、何をするのも嬉しくてたまらないっていう感じで笑顔で挨拶しながら入館したら、笑顔で対応してくれた人だった。
彼がそれを覚えていて、「こいつは悪い奴じゃない」って思って許してくれたのかどうかはわからないけれど、もしかしたらそうかもしれないなと思うと、またまた嬉しい気持ちになった。

国際仏教博物館

キャンディの次はエッラへ

キャンディのあと、どこへ行くかは決めていなかった。
僕は訪問1カ国目のスリランカの「地球の歩き方」だけは持っていっていたから、それを眺めたりしながら、「鉄道に乗って、適当なところまで行ってみよう。」と思った。
キャンディから更に南東部へ向かう鉄道は、車窓からの景色がアジア一美しいらしいのだ。
紅茶の名産地として有名な「ヌワラエリア」もいいけれど、そこまで有名ではないところへ行ってみようと思い、更に奥にあるエッラという場所を選んだ。
鉄道の乗り方もわからないし、エッラがどんなところかも、行って何をするのかもよくわからないけれど、わからないままとにかく行動してみることのワクワク感を、全身で感じていた。

キャンディの駅