僕は、50歳になってから、初めてのバックパック旅行、それも世界一周の旅に出ました
しかし、最初は不安が大きくて、しょっぱなから、本来自分がやりたかった旅のスタイルを貫けず、ちょっと残念な思いをしました
その失敗と、そこから学んだことをお伝えします
スリランカで不本意なツアーを申し込んだ失敗談
「脅し」に負けたとき
初めての海外一人旅 ガイドもなく 完璧な予約もない 自由だけど 不安でいっぱい 日本にいると 危険情報ばかりが目について 恐怖心を煽られ 安心を求めてしまった これはどこでも行われているコントロールの構造 恐怖心を煽り 不安を掻き立て 救いの手を差し伸べるかのように 支配の罠にはめる 不安からの選択に自由はなかった 安心安全の籠の中で 生命力を弱められた日本人が たくましさを蘇らせるには すべてを運命に委ねて あえて怖れの中に身を投じる 少しの勇気が必要 その先にある解放感と 腹の底から力が漲る感覚は 新しい自分の第一歩
プライベートツアーに申し込んでしまった事件
僕が世界一周の旅をスタートさせたのは、スリランカでした
スリランカは、インドの南の海にある島国で、大きさは北海道より少し大きく、経済的には発展途上のいわゆる貧しいと言われる国の一つです
と言っても、古い歴史と伝統を持つ精神性豊かな仏教国であり、親日国としても有名です
ここでは旅に出たばかりのときに僕がハマった罠についてお話しします
僕がしたかった自由な旅のスタイルとは?
僕は、自分の感覚を信じ、自分の感覚にしがって、心のままに歩むような、自由で自立した旅をしようと思っていました
五感を研ぎ澄まし、第六感ともいえる感覚を磨き、自分自身やこの世界のことについて、じっくりと感じて味わい尽くすことを一番大切にしようと思っていました
決まり切った観光ツアーとか、誰かに頼り切った旅のスタイルを取る気など、一切なかったのです
なのに。。。
いきなりプライベートツアーに申し込みました。どうして?
世界一周の旅の初日、僕はあらかじめ日本語ができるオーナーがいる宿を予約しておき、そこの送迎車に空港まで来てもらって、宿へと送ってもらいました
なぜなら、初めての海外一人旅で、不安だったからです
出鼻から不安に負けていましたね
僕は、そこに1泊した後は、自分でバスや鉄道を乗り継いで、心のおもむくままに見どころなどを回るつもりでした
ところがです
宿のオーナーから、今後の予定を聞かれて、バスで移動するつもりだというと、そのオーナーは顔をしかめ、「それはいけない。あなたは知らないかもしれないが、スリランカのバスなんて、乗るもんじゃない。プアな乗り物だ。とっても汚いし、とっても危ない。」という意味のことを強い口調で言ってきたのです
僕は、そこまでの情報は聞いていなかったので、それが本当なのかどうか判断する材料はなく、単純に、「地元の人が親切に教えてくれているんだ」と思って、動揺してしまいました
正直、「えー、どうしよう、怖いな」と不安になりました
それをみたオーナーは、「うちの運転手のツアーなら絶対安心だよ。いいやつだし、英語も話せる。つい昨日までも、日本人グループのツアーに行ってきたけど、みんな大満足で楽しんでくれた。」と言って、写真ファイルを持ってきて、ツアーの様子が写った写真を見せてくれました
「スリランカは交通の便が良くないから、いろんなところをみて回るなら、自動車が必要なんだ。宿もピンキリだからちゃんと選ばないとね。ツアーなら、こちらでいい宿を安く頼むことができるよ。」などと言うのです
まあ、僕のことを心配して言ってくれているのだな、と受け取りましたが、日本ではあまりお目にかからないような、威圧感というか押しの強さを感じて、動揺しました
僕は、押しの強い人が苦手で、あんまりいい気持ちはしなかったし、空港からの送迎をしてくれた運転手も、英語ができると言っても、なまりが強くて聞き取りにくかったので、なんとなく嫌な感じがしました
それでも、やはり不安が大きかったので、どうしようかと迷ってしまい、とりあえずと思って料金を聞いてみたところ、5、6日間のツアーでも日本円で6万円くらいするような結構な値段でした
物価の安いはずのスリランカでいきなりそんなにお金を使う気はなかったので、断りたいなという気持ちもあったのですが、「料金相場もわからないし、バスの旅がそんなに危険なのであれば、ここは地元の人のアドバイスに従った方がいいのではないか。せっかく心配してくれているのに、断ったら悪いな。人間関係が険悪になるのも嫌だな。それに自動車の方が効率よく回れるし、、、」などとひよってしまいました
それで、若干の価格交渉をして少し値切ったところで、断りきれない感じでツアーに申し込んだのです
初めての外国で、地元の人から危険情報を伝えられると、心配で動揺しちゃうよね
その人から、こっちが安全でおすすめだと言われたら、どうしてもそれを選びたくなるし
これは仕方ないよ
うん
今はいい勉強だったと思っているけど、その当時はちょっと落ち込んだよ
プライベートツアー中に感じた違和感
断っておきますが、プライベートツアー自体が良くなかったというわけではありませんし、騙されたという気もありません
ドライバーさんは、一生懸命僕を楽しませようとしているのがわかりましたし、僕の希望を聞いて、いろいろなところに立ち寄ったりもしてくれました
行きたかった場所に効率的に行けて、時間をたっぷりとって遺跡を堪能することもできました
だから、あれはあれで良かったと思っているのです
ですが、僕の心は曇りがちでした
ほぼずーっとそのドライバー兼ガイドが一緒にいてくれて、自分で努力しなくても、行きたいところへ連れて行ってくれて、宿を予約済で、宿までも連れて行ってくれて、食事をする場所も決めてくれて、そのレールに乗って、時々希望を言うだけという状況が、自分の考えていた旅のスタイルとは大違いだったので、違和感だらけでした
そんな僕の気分を察して、ドライバーさんは、自分に不満を抱かれていると思ったようで、なんとなく機嫌が悪くなっていき、僕の方もそれに対して罪悪感を抱いたり不満を抱いたりで、やっぱりツアーに申し込まなければよかったと思ってしまいました
そして、予定の日数がおわり、延長を強く求められましたが今度はきっぱりと断りました
やっと一人きりになったとき、なんともいいようのない自由な感覚、解放感を感じたことをよく覚えています
これから本当の自分の旅が始まるんだと感じて、心が晴々としたのです
失敗があったからこそ、次の解放感が実感できたんだね
よかったじゃん!
そうそう、最初からうまくいかない方が、結果としてよかったりするんだよね
あの時の自分の心の動きを分析すると
ツアーを申し込んだ時は、とにかく、よくわからないことだらけでしたし、不安でいっぱいのところに、その不安を煽るようなことを言われて、動揺していました
自分の意思、揺るがない決意、確固とした方針、みたいなものがある時はいいのですが、そういったものをもたず、他人に影響されやすいフワフワした精神状態だったので、いとも簡単に揺さぶられました
「地元の人はよく知っているはずだ。地元の人のいうことを聞いておいた方が安心だ」という思いもあり、依存心が強く働きました
それと、「こちらのことを心配してアドバイスしてくれている人の勧めを断ると悪いな」とか「こんなに強く勧めていることを断ったら、角が立つな。機嫌を損ねるな」というような、変な事なかれ主義の発想が、根強く残っていました
とにかく、不安や恐怖を煽られて動揺させられると、自分はいとも簡単にコントロールされるのだということを痛感した経験でした
そしてそれは、過去にも繰り返された、僕の失敗のパターンだったのです
相手の気持ちに配慮するのは美徳でもあるんだけど、時と場合によるんだね
過去の失敗って、なんなんだろう?
失敗だらけだよ
まあ、人生において、失敗も失敗ではない、というのがモットーなんだけどね
その後の旅で心がけたこと
僕はこの経験から、その後いくつかのことを心がけるようになりました
一つは、脅しと偽の助言という、コントロールのパターンがよく使われることを自覚しておこうということ
二つ目は、ツアーでなければいけないところにどうしても行きたい時、またはツアーでなければできない体験をどうしてもしたい時、そういう時だけはツアーに参加するが、それ以外はツアーに頼らないというルールを決めたこと
三つ目は、いい子ちゃんでいるのはやめようということ
いい子ちゃんというのは、目の前にいる人に対して、そのご機嫌を損ねないように気を使う態度、乱暴に言うと「あなたの言うことに従うから優しくしてね」という態度のことです
こういうと、いい子ちゃんを止めるのは簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、日本社会の基本的な在り方はこのようないい子ちゃんスタイルに近いのではないでしょうか
僕は、勝手に「いい子戦略」と名付けましたが、”出る杭は打たれる”社会のルールやマナーを守り、上の人間の御眼鏡にかなう行動をしていれば、それはちゃんと評価されて、有利な扱いを受けるはずだ、という信頼のもとで、いい子でいることで生き残ろうという戦略が、広く浸透しているような気がします
しかしそれは、旅の中では通用しない場面が多いですし、自立心の足りない在り方のように感じるので、その戦略に頼るのはやめて、逆に自分の身は自分で守る、そのためにも積極的に自己主張をしていくという「自己主張戦略」を取り入れていくことにしたのです
もちろん、その国にはその国のルールやマナーがあるので、それを無視するということではありませんし、多くの一般の人は優しくて親切でしたから、無闇に強く自己主張する必要はなく、穏やかにフレンドリーに接していれば、お互いハッピーという場面がほとんどでした
ただ、旅行客相手の商売をする人たちの中には、かなり露骨に飴と鞭を使う人が多かったので、そういう場面では自分を強く持つように心がけたわけです
端的に言うと、相手のご機嫌に左右されず、断りたい時は毅然として断るようにしていきました
いつもそのとおりにできたわけではありませんが、この三つを心がけるようにしてからは、脅しに屈して後悔することもずっと少なくなりました
まとめ
不安や恐怖を植え付け、煽り、怖れに飲み込まれた状態にした上で、あたかもそれに対する救済の手を差し伸べるかのように、解決策を示すかのように、一定の方向へと誘導する餌を与えると、人は容易にコントロールされるものです
人だけでなく、動物を調教するときも同じような飴と鞭が使われますが
それと同じことを人に対しても行うやり方は、いつの時代でも使われるコントロール手法なのです
詐欺や恐喝、監禁のような犯罪の場面では露骨な形で使われますが、それだけでなく、今回のように商売のためにも使われますし、組織の上の者が配下の者をコントロールするときも、権力者が一般の人々をコントロールするときも使われる常套手段なのです
脅しに動揺してうまくコントロールされないようにするためには、この「プライベートツアーに申し込んでしまった事件」の教訓を生かして、①このやり口を知って警戒し、②自分なりのルールを持ち、③権威のありそうな者に依存せず、いい子ちゃんはやめにしてきっぱり断ることが大切なのだと思います
特に③は、人間の在り方そのものに関わる根深い問題なので、いつも意識して、日常的な細かな行動や選択をするごとに実践する「反復トレーニング」を通して身につけていくことだと思います
初めての海外一人旅は、不安や恐怖との戦いの連続ですが、それに負けていては、お金で安全を買い続けて無事に帰国するだけの旅行になってしまいます
僕は、どんな経験も味わい尽くす、本当のジャーニーに勇気を持って挑戦し続けたかったのです
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