僕が2017年から2019年にかけて世界中を旅して訪れた場所の中から、印象に残ったスポットやそこで感じたことなどを、その場で撮影した写真とともにご紹介しています
今回からは、エジプトシリーズ
そしてこの記事は、エジプト南部の街アスワンから更に南部のスーダン国境近くにあるアブ・シンベル神殿への旅についてです
行ったことがある方なら思い出が蘇るように、まだ行ったことがない方なら旅のイメージが広がって夢を実現させるきっかけとなるように、写真を多めにご紹介していきます
初めてのエジプト。カイロからアスワンへ
カイロ空港では騙されないように注意
僕は、世界一周航空券を使って移動していたこともあり、比較的多めに飛行機を使っていました
ヨルダンからエジプトへの移動も飛行機
エジプトでは、カイロ空港に到着して国内線に乗り換え、真っ先に南部のアスワンへ向かうことにしていました
そこから、だんだん北上してカイロに戻ってこようという計画です
カイロ国際空港で、25USドルで入国ビザの印紙を買い、審査を経て入国するまでは順調でした
しかし、第1ターミナルから国内線の出発する第3ターミナルへの行き方がわかりませんでした
最初に目についたタクシーカウンターで、第3ターミナルへの行き方を尋ねると、係の女性から
「歩いていくことはできません
タクシーで180エジプトポンドです」
と言われました
現在のレートで言うと、1200円近くと決して安くない金額です
僕は「○○はできないから、こっちを選べ」みたいな言い方は安易に信用できないことを、それまでの旅で学んでいましたし、その前に訪れたヨルダンで、到着直後に通貨単位を間違えて危なく大損しそうになる経験をしていたので、ちょっと落ち着いて考えようと思い、まずは近くのATMを探して現地通貨を下ろしに行きました
そうすると、幸いなことにATMの隣にターミナルビルの案内表示機がありました
それで調べてみると、案の定、歩いてすぐのところに第3ターミナルがあるようでした
そうすると、タクシーカウンターの女性が言っていた、「歩いていくことはできません」という言葉は何だったのでしょう。。。
案内の地図に従って歩いていく途中、いったん別の建物に入りました
そこでは、首から身分証らしきものをぶら下げた男性が何人もうろついており、その中の一人が近づいてきて
「どこへ行くのですか?私はオフィシャルな案内係なので案内します。私についてきてください」
などと声をかけてきました
身分証を見ても、アラビア語は全くわかりませんし、英語でも何か書いてあったかもしれませんが、それ自体本当のことを書いているとは思えませんでした
なので、こちらも「大丈夫だから、結構です」と言って断り、場所を移動したのですが、結構しつこくつきまとってきました
歩き回っているうちに、インフォメーションカウンターが見えたので、そこへ向かって歩いていくと、彼は離れていきました
インフォメーションカウンターで
「あの人たちは、正式な案内係なのですか?」
と尋ねると、「違います」ということでした
と言っても、目の前で旅行者に声をかけまくっている姿を見ていながら、それをやめさせようとする様子はありませんでした
黙認なんでしょうかね
そのビルを出て、「本当にこんなところでいいの?案内表示もないし、ターミナル間を移動するようなちゃんとした感じが全くないんだけど」というようなところを、ちょっと不安になりながら歩いていくと、すぐに第3ターミナルに着くことができました
到着早々、エジプトの洗礼を受けた経験でしたが、なんとか試練を潜り抜けたことで、ちょっと嬉しくなりました
こういうちょっとした喜びは、それなりの苦労をしなければ得られません
旅の間、こんな小さな経験を重ねて、「トラブルを避け、苦労せず、スムーズに効率的に、うまくやることが幸せなのかというと、それは違うな」という感覚が少しずつ確信になっていきました
人生の豊かさは、何かを達成することではなく、プロセスを味わうことにあると、少しずつ体で覚えていった気がします
アスワン。母なるナイル川に思う、水のありがたさ
カイロからアスワンまで飛行機で移動しました
アスワン空港では、街までの適当な公共交通機関が見つからなかったので、空港の出口で言い寄ってくるタクシードライバーたちと交渉しなければなりませんでした
200と言われ、100と言い、150と言われ、130と言って粘りましたが、結局は疲れたので150で妥協しました
この時はまだ交渉のやり方がよくわからなかったのですが、妥協してから、「初めは50くらいからにして細かく上げていった方が良かったな」と思いました
タクシーから降りる時には、ドライバーからバクシーシ(施し)を要求されたが、タクシー代自体がかなり高いと思ったのでお断りしました
アスワンは非常に雨の少ない乾燥地帯にある都市です
それだけに、ナイル川の存在感がとっても大きいです
ヨルダン、エジプトと、乾燥した地域を巡ってきて、一番強く感じたのは、「水は、人間にとって、ものすごく大事なんだ」ということでした
日本は、「湯水の如く使う」という言葉があるくらい、水に恵まれています
しかも、元々は水が綺麗で美味しい
この美しい水を作っているのは、豊かな森です
また別の機会にも述べたいと思いますが、この「豊かな森と綺麗な水は日本の宝」ということが、世界中を旅して最も強く感じたことの一つです
さて、ナイル川のほとりには、ファルーカと呼ばれる小さな帆船がたくさん浮かび、ここの観光名物の一つになっています
僕は、どうしてもこれに乗りたかったわけではありませんが、「夕暮れのナイル川を船の上から眺めるのは気持ちよさそうだな」「なんでも経験してみよう」と思い、夕暮れ時に乗ってみました
ナイル川のゆったりした流れの上で、エジプト人のおじさんが操る小さな帆船に一人で乗り、心地よい風に吹かれながら夕焼けを眺める贅沢な時間
僕は旅の幸せを噛み締めました
夜、僕はアスワンの街のスークをあてもなく歩き回りました
目に入る商品の色使いや模様、道ゆく人々の表情、言葉、服装、そこかしこから漂う食べ物の匂い、、、
街歩きは、異国情緒を味わう旅の醍醐味だと、あらためて感じました
アブ・シンベル神殿を訪れる
世界遺産「アブ・シンベルからフィラエ島までのヌビア遺跡群」
アスワンの観光の目玉の一つがアブ・シンベル神殿です
アスワン付近から南のスーダンにかけてエリアは、「ヌビア」と呼ばれ、紀元前26世紀頃から王国が作られていて、古代エジプト文明と強く影響を与え合ってきたそうです
そんな歴史あるヌビア地方には、古代エジプトの巨大な遺跡がいくつもあり、このアブ・シンベル神殿から、アスワンの近くにあるもう一つの観光の目玉フィラエ島のイシス神殿にかけての遺跡群が、ヌビア遺跡群として世界遺産に登録されています
というより、1960年代、アスワン・ハイ・ダムの建築によってこれらの遺跡群がダム湖の下に沈む危機に見舞われた際、ユネスコが、これらの遺跡を移築して保存するという巨大プロジェクトを行い、それが「世界遺産」制度の出発点となったそうです
アブ・シンベルへのバスツアー
アブ・シンベルはアスワンから車で3〜4時間ほどの砂漠の真ん中にあります
ちょっと前までは、盗賊に襲撃される危険が大きかったため、必ず武装警官が同行したそうですが、2017年10月の時点では、そのような話はありませんでした
とは言え、治安的に不安があり、この当時はまだ一人でどこへでも行く自信がなかったので、泊まった宿の紹介するバスツアーに参加することにしました
翌朝3時50分というとても早い時間の集合でアブシンベルバスツアーへ出発しました
午前8時頃にアブ・シンベルに到着して、帰りの出発時刻である9時45分まで、各自自由に見学する時間でした
入場料は115エジプトポンドと、なぜか存在しないガイド料が14.5エジプトポンドかかりました
アブ・シンベル神殿は、紀元前1250年頃、古代エジプト新王国大19王朝のファラオ、ラムセス2世が造ったもので、岩をくり抜いた岩窟神殿です
太陽神ラーを主祭神とする大神殿と、愛と美の女神ハトホル神を主祭神として第一の王妃ネフェルタリのために造られた小神殿からなります
ネフェルタリは、古代エジプトの三大美女の一人で、他の二人はあのクレオパトラと、ネフェルティティです
大神殿の正面には、4体の巨大な人物像が彫られているのですが、全てラムセス2世自身の像で、若い時から歳を取った時までの年代ごとの顔になっています
神殿内は素晴らしいレリーフなどが彫られていましたが、撮影禁止でした
ここで感じたのは、ラムセス二世の無邪気な自己顕示、権威の誇示という、ある意味人間らしいエゴの無邪気な喜びでした
小神殿の正面には、巨大なラムセス2世の立像4体と、王妃ネフェルタリの立像2体が彫られていました
こちらも神殿内は撮影禁止でした
小神殿で感じたのは、ネフェルタリへの想いなのですが、ただ無邪気な愛情だけでは済まない、人間関係の複雑な感情が込められていて、少し重い雰囲気もありました
神殿の目の前には、アスワン・ハイ・ダムの建造によってできた人造湖「ナセル湖」が広がっていました
この湖への水没から救うため、1960年代に、この巨大な遺跡を、いくつもに切り取って約210メートル離れた丘の上にそっくり移したのが今の姿だそうです
それにしても、よくやったものだと感心せずにいられませんでした
ラムセス2世は、24歳から90歳で亡くなるまで66年間もエジプトを率い、シリア、パレスチナ、ヌビアなどにその勢力を拡大した最も偉大なファラオの一人と言われているそうです
この間、テーベ、カルナック、ルクソール、ラムセウスなど、いくつもの巨大な建造物を建造しており、その一つがこのアブ・シンベル神殿です
なんだか、ラムセス2世にも興味が湧いてきました
まとめ
エジプトは、人類の歴史においてとても重要な場所です
エジプトの旅には、旅行者目当ての詐欺やぼったくりとのバトルなど大変なところもありますが、それを補って余りある感動が待っていました
3000年以上も昔の建造物、壁画、レリーフなどを目の前にして、時間を超えた不思議な感覚が広がりました
次は、アスワンからイシス神殿で有名なフィラエ島への旅についてです
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